研究概要 |
キュウリモザイクウイルス(CMV)はトマトモザイクウイルス(ToMV)と同じアルファ様ウイルススーパーグループに属す。これらのウイルスは基本的に類似した、しかし細部においては多様性に富む機構で複製すると考えられる。本研究は、CMV RNAの複製機構をToMVのそれと比較し、複製複合体の構造あるいは形成機構の一般性と特殊性を把握することを目的とする。我々は、界面活性剤リソフォスファチジルコリンがToMVの膜結合性複製タンパク質を効率よく、しかも複製に関係する宿主因子との結合を維持したまま可溶化することを見いだした(Nishikiori et al.,2006:「本年度の研究成果」参照)。そこで本年度は先ず、アフィニティー精製用のタグを融合した複製タンパク質をコードするCMV誘導体を作製した。これらのCMV誘導体は感染性を維持していたので、タバコBY-2細胞にエレクトロポーレーション法により感染させ、感染細胞から複製複合体を含む膜画分を得た。これをリソフォスファチジルコリンで処理したところ、ToMVの場合に比して効率は低いが、一部の複製タンパク質が可溶化された。さらにここから複製タンパク質をアフィニティー精製すると、結果は予備的ながら宿主由来と考えられるタンパク質が共精製された。この宿主タンパク質を同定するには、可溶化効率の向上等さらなる条件検討が必要な状況にあるが、共精製されたタンパク質はToMVの場合と異なっていた。
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