研究概要 |
リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ゲノムRNA2がコードするポリタンパク質のVp42とVp25の間に外来遺伝子を導入するため、Vp42/Vp25間のプロテアーゼ切断部位Q/G前後の異なる数のアミノ酸(3〜9個)を反復し、人為的にプロテアーゼ切断認識配列を付加した複数の感染性クローンを構築した。さらに相同組み替えによる外来遺伝子の脱落を防ぐために、反復したプロテアーゼ切断部位Q/G前後のアミノ酸配列が変化しないように、コドンの第3番目に変異を導入したクローンも構築し、さらに、GFP遺伝子を用いて、ウイルスベクターの安定性を調べた。プロテアーゼ切断部位Q/G前後の反復アミノ酸数が比較的多いクローン(pER2L10R19GFP、pER2L10R15GFP pER2L5R15GFP)では3代継代接種以後はGFPの蛍光は検出されなくなり、GFP遺伝子に欠失が生じた。一方、Q/G前後の反復が5アミノ酸のクローン(pER2L5R5GFP)とpER2mL5mR5GFP(pER2L5R5GFPのコドンの第3番目に変異を導入したクローン)では、9代継代接種後でもGFPは安定して発現していた。 次に、導入遺伝子のサイズと遺伝子の安定発現との関係を調べた。 pER2L10R19,pER2L5R5GFPおよびpER2mL5mR5GFPにサイズの異なる遺伝子、すなわちACLSV-MP(1500bp),GFP(900bp),ACLSV-CP(700bp),ACLSV-ΔCP1(450bp),ACLSV-ΔCP2(300bp)を導入して、C.quinoaで継代接種し、導入遺体子の安定性を調べた結果、ACLSV-MP(1500bp)に関しては、pER2L10R19で2代目以降、pER2L5R5で4代目以降、pER2mL5mR5で6代目以降に遺伝子の脱落が認められた。一方、pER2L5R5GFPおよびpER2mL5mR5GFPでは、GFP(900bp)よりサイズが小さな遺伝子はC.quinoaで少なくとも6〜9代継代接種しても安定に発現することが明らかになった。 以上の結果より、プロテアーゼ切断部位Q/G前後の反復アミノ酸数を少なくすると導入遺伝子はより安定化すること、また導入する遺伝子のサイズが小さい方がより安定して発現することが明らかになった。
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