研究概要 |
1)ALSVベクターのリンゴへの効率的導入法の検討 (1)カーボランダム法、(2)切り付け接種法、(3)パーティクルガン法のよるALSVベクターの接種効率について検討した。カーボランダム法によるリンゴ実生苗への接種試験では、本葉への接種で0〜20%の個体で感染が認められ、発芽直後の胚軸への接種では40%の感染率であった。切り付け接種法では20〜40%の個体で感染が確認された。一方,感染性cDNAクローンをパーティクルガン法で接種しても感染は認められなかった。 2)抗菌ペプトドおよびリンゴウイルス外被タンパク質の発現 抗菌ペプチドであるダイアポジン遺伝子をALSVベクターに繋ぎ、植物体に接種した結果、ウイルス感染およびダイアポジンの発現を確認できた。またリンゴクロロティクリーフスポットウイルス(ACLSV)の外被タンパク質を発現するACCP-ALSVをリンゴに接種した結果、2個体でウイルス感染個体を得ることができた。これらの個体がACLSV接種に対して抵抗性を示すかどうかは、サイレンシングと関連させながら今後検討していく。 3)ALSVベクターのジーンサイレンシング誘導ベクターとしての利用 GFP発現タバコ(GFP-タバコ)にGFP-ALSVを接種すると、接種葉では接種後5日(5dpi)から、上葉では15dpiからGFP蛍光が消失し始め、やがて葉全体でサイレンシングが誘導された。GFP発現N.occidentalisにGFP-ALSVした場合も同様に、接種葉では4〜5dpiから、また上葉では7dpiから蛍光が消失し始め、14dpi以降に展開した葉では葉全体でGFP蛍光は観察されなくなった。GFP遺伝子の3'末端を欠失したDNA断片をALSVベクターに連結してサイレンシング誘導に必要な塩基数を調べたところ、全長(約700bp)、300bp、200bp、100bpのいずれでもサイレンシング誘導の程度に差異は認められなかった。接種植物を20℃、25℃、30℃で生育させて温度の影響を調べた結果、高温(30℃)でサイレンシング効率が高かった。
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