研究概要 |
1)ウイルスベクターの外来遺伝子発現用ベクターとしての利用 本課題において、リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ゲノムの感染性cDNAクローンをウイルスベクター化し外来遺伝子の発現に利用できることは昨年度までに報告した.本年度は,シロイヌナズナの花芽形成に関わるFlowering Locus T(FT)遺伝子を連結したウイルス(FT-ALSV)を構築し,4種のNicotiana属植物,ペチュニア、シロイヌナズナに接種した.その結果,いずれの植物においても大幅な開花促進が認められることが明らかになった。この結果は、FT-ALSVを用いることで、開花まで数年〜10年以上を必要とする果樹類においても、開花を制御(促進)する可能性を示している。 2)ALSVベクターのRNAサイレンシング誘導ベクターとしての利用 ALSVベクターが4種のNicotiana属植物(N.tabacum, N.benthamiana, N.glutinosa, N.occidentalis)の内在性遺伝子[phytoene desaturase(PDS)とsulfur(SU)]のVIGSを効率よく誘導することは昨年度に報告した.本年度はALSVベクターがシロイヌナズナ内在性遺伝子のVIGSを誘導するかを検討した.シロイヌナズナのPDSとchlorata42(CH42)遺伝子の一部を導入したALSV(aPDS-ALSVとCH42-ALSV)を構築し,シロイヌナズナに接種した結果,aPDS-ALSV接種植物では接種後10日(10dpi)から其の一部の白色化が始まり,その後展開する葉はすべて白色になった.またCH42-ALSV接種植物でも15dpiから黄色の葉が展開し始めた.この状態は、短日条件で育成したシロイヌナズナで約3ヶ月以上維持された.これらの葉を半定量的RT-PCRで分析したところ、両遺伝子のmRNAが減少していた.以上のように,ALSVベクターはVIGSを安定的に誘導し,かつウイルス感染による病徴が現れないことから,シロイヌナズナ遺伝子の機能解析に有効なウイルスベクターと考えられた.
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