研究概要 |
本研究では、茎葉型プラントアクチベータによる土壌病害回避法の確立と、そのメカニズムの物質・分子レベルにおける解析を目標とする。候補物質としては、非殺菌性擬似糖であるバリダマイシンAを使用することとした。本年度の主要な研究実績は以下の通りである。 1,世界的に重要な土壌病害であるトマト萎凋病に対する、バリダマイシンA茎葉散布による発病抑制効果について、多くのトマト品種を用いて調査した。また、その抑制効果におよぼす環境要因についても調査した。この成果は、現在Phytopathology誌に投稿中である。 2,バリダマイシンA茎葉散布による病害防除の適用範囲拡大について検討し、トマトうどんこ病、トマト疫病、ハクサイ黄化病、バナナパナマ病などの世界的に重要な病害に対する効果が認められた。ハクサイ黄化病については、実用化を想定し、茨城県における圃場試験を依頼した。 3,バリダマイシンAを茎葉散布したトマト茎葉組織内でのサリチル酸の蓄積が確認された。これは、バリダマイシンA茎葉散布によって、SAR(全身獲得抵抗性)にかかわるシグナルが伝達され、トマトが萎凋病に対する抵抗性を持ったものと推定された。この成果は、現在Phytopathology誌に投稿中である。 4,バリダマイシンA茎葉散布処理トマトでの萎凋病菌動態を可視化し、バリダマイシンAによる発病抑制メカニズムの解析に資するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するトマト萎凋病菌を用いることとした。このため、トマト萎凋病菌に緑色蛍光タンパク質遺伝子を導入、観察条件の検討を行った。
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