研究課題
本研究では、ハダニ類の性を操る微生物であるCytophaga-Flavobacterium-Bacteroides(CFB)細菌の機能の解析および性特異的遺伝子の探索を目的として、次の点を検討した。1.スギナミハダニのCFBは、宿主に細胞質不和合性を発現し、次世代に対して90%以上の高い垂直伝播率を示すことが分かった。2.ナミハダニモドキでは、WolbachiaとCFBに二重感染している個体群が発見されたので、熱処理によりWolbachiaだけを除去した系統と抗生物質処理によってCFB細菌だけを除去した系統、およびいずれの細菌も除去した系統を作出して、これらの共生微生物がハダニの生殖に及ぼす作用を検討した。その結果、二重感染個体では、いずれかの細菌を除去してもハダニの生殖には全く影響がなく、これらは性を操る作用を持たないか、作用を引き起こす能力が弱いことが分かった。3.CFBにおける16S rDNAとgyrB領域の塩基配列を決定して系統解析を行った結果、ハダニの5種7個体群に感染しているCFBは従来から知られている昆虫やダニのものと単系統を形成し、最近になって提案されたCardinium属にまとめられることが分かった。このことから、ハダニ類には、WolbachiaとCardinium細菌が広く感染していると推定される。4.CFB細菌の感染が宿主細胞の遺伝子発現にどのような影響を与えているのかを明らかにするため、マダニIxodes scapularisのCFB細菌を感染させたカイコ培養細胞と非感染細胞との間で発現量に差のある遺伝子の存在について、カイコcDNAマイクロアレイを用いて調査した。その結果、昆虫の免疫応答誘導に関わる抗菌ペプチド遺伝子数個の発現量が増加していることが分かった。
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