研究概要 |
カイコ由来BmN4細胞とBoMo細胞をモデル実験系として,カイコのESTが6000個乗ったマイクロアレイを用いて,遺伝子発現の細胞株間差異と培養条件による影響を網羅的に解析し,カイコBmN4細胞とBoMo細胞の遣伝子発現パターン及びTC-100培地(10%牛胎児血清添加)とSf-900II無血清培地で培養したBmN4細胞の遺伝子発現パターンの差異をそれぞれ検出できた。現在、得られた膨大なデータを解析中である。比較の対照として、サクサン由来AnPe細胞をTC-100培地(10%牛胎児血清添加)とSf-900II無血清培地でそれぞれ培養し、遺伝子発現をディファレンシャルディスプレイ(DD)分析で比較したところ、発現量に培地間差異のある110個の転写産物の断片が検出され,ホモロジー検索により39個の相同遺伝子の候補を同定できた。現在、BmN4細胞とAnPe細胞における培地による遺伝子発現パターンの変化を詳細に比較検討中であり、変化の共通性が明らかになれば、鱗翅目昆虫培養細胞の代謝を人為的にコントロールする培養技術の開発が可能になると期待される。また、AnPe細胞ではほ乳類型の複合型N型糖鎖付加が起こる事も明らかとなったので、カイコ培養細胞のN-グリコシル化経路改変のモデルとして今後も比較対照に用いることにした。 また,BmN4細胞を効率良く形質転換するためのpiggyBacベクターの構築を試みた。ピューロマイシン耐性によりGFP生産形質転換細胞を選抜できる2種類のpiggyBacベクターを作製し,BmN4細胞の形質転換効率を比較したところ,蛍光強度の強いGFP陽性細胞の割合はカイコのアクチンA3プロモーターよりもショウジョウバエのhsp70プロモーターの制御下でピューロマイシン耐性遺伝子を発現するベクターの方が多く、今後の代謝改変実験遂行に適していると判断された。
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