研究概要 |
カイコ由来BmN4における培地依存的な遺伝子発現を、新たに開発されたオリゴDNAマイクロアレイを用いて分析した結果、TC-100(+10%)培地とSf-900II培地の間で2倍以上発現量が異なる遺伝子を383個(TC>Sfが262個、Sf>TCが121個)検出できた。TC-100(+10%)培地で発現が増加する遺伝子にはコラーゲンなど細胞外マトリクスや糖鎖修飾など分泌経路に関わるものが多く含まれており、一方、Sf-900II培地では特定のレクチンや熱ショックタンパク質遺伝子の発現が増加していた。特に発現量に大きな差が見られた遺伝子のプロモーターは、培養細胞における遺伝子発現を培養液成分で制御できるので、有用タンパク質生産に利用可能であると判断された。 比較対照として供試したサクサン由来AnPe細胞については、前年度のディファレンシャルディスプレイ(DD)分析で同定された培地感受性遺伝子のうち、TC-100(+10% FBS)培地で発現が多くなる2遺伝子(GC10dとGC19f)と、Sf-900II培地で発現が多くなる3遺伝子(CA09f,CA15dおよびCA20d)について定量RT-PCR分析で再現性が確認できた。これらの遺伝子は、2種類の培地の等量混合培地や10%血清添加Sf-900II培地において、若干の例外はあるものの中間的な発現量を示す傾向が見られ、ウイルス感受性も中間的であった。したがって、AnPe細胞における5種類の遺伝子の発現調節とウイルス感受性は、主に血清中の成分とSf-900IIの成分のバランスで決定されていると判断された。同定された5種類の遺伝子とウイルス感染との関連については今後検討を行う。 なお、BmN4細胞とAnPe細胞における培地による遺伝子発現パターンの変化を比較した結果、一部の熱ショックタンパク質遺伝子の発現量変化に共通性が認められた。
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