研究概要 |
品種、栽培した場所、サンプリングの部位(茎と葉)や時期を変えたサトウキビからDNAを抽出し、ニトロゲナーゼ(nifH)相同配列のPCR増幅を行い、塩基配列の相同性を検索した。その結果、DNA抽出の条件によらずBradyrhizobium属とKlebsiella属のnifH遺伝子と高い相同性を持つクローンが高い頻度で出現した。ポットで栽培したサトウキビの根と茎からBradyrhizobium属のnifH遺伝子と相同性の高い配列の存在を確認し、またそのnifH遺伝子の発現を検出した。これらのnifH遺伝子相同配列には多様性があり、Bradyrhizobium属がサトウキビに内生し、窒素固定を行っていることが示唆された。一方、圃場で栽培したサトウキビの茎からはClostridium属とKlebsiella属のnifH遺伝子と相同性の高い配列の発現を検出した。圃場で栽培したパイナップルの葉からはAzoarcus属とXanthobacter属のnifH遺伝子と相同性の高い配列の発現を検出した。 圃場で栽培したサツマイモの葉、葉柄、茎および塊根から抽出したDNAおよびRNAより、nested PCRによりnifH遺伝子断片を増幅し、塩基配列の相同性を検索した。サツマイモのDNAからは、Paenibacillus azotofixans, Herbaspirillum seropedicae、Anabaena 7120, Rhizobium leguminosarum等のnifH遺伝子と高い相同性を示す遺伝子断片が得られた。またサツマイモ体内では、Bradyrhizobium sp.やuncultured bacteriumのnifH遺伝子と高い相同性を示す遺伝子の発現が認められた。これらのことから、サツマイモ体内には複数の窒素固定細菌が感染し、窒素固定機能を発現しているものと推定された。 このように本研究によってサトウキビ、パイナップル、サツマイモの植物体内からnifH遺伝子の発現がはじめて確認された。
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