研究課題/領域番号 |
15380049
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
太田 啓之 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (20233140)
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研究分担者 |
増田 建 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00242305)
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キーワード | 糖脂質 / リン欠乏 / 糖転移酵素 / ホスホリパーゼC / リン脂質 / 生体膜 |
研究概要 |
生体内でのリンは、DNAやRNAなどの核酸の構成成分、ATPなどのエネルギー供与体、タンパク質のリン酸化によるシグナル伝達などに重要な役割を果たしているが、植物体内のリンの約3割がリン脂質として生体膜を構成しており、生体内リンのひとつの大きなプールとなっている。一方、植物の葉緑体においてはモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)とジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)の2つの糖脂質が全膜脂質の80%以上を占めており、これらの糖脂質が葉緑体の機能に密接に関わっていると考えられている。これまでMGDGやDGDGなどのガラクト糖脂質は高等植物においては葉緑体のようなプラスチドに特異的な脂質であり、ミトコンドリア膜や細胞膜には存在しないと考えられてきた。しかし、最近の我々や国内外の一連の研究によって、リン欠乏条件下においては、リン脂質含量の著しい低下が起こり、それに呼応して、ガラクト糖脂質生合成系が顕著に活性化されることが明らかとなってきた。本研究では、リン欠乏条件に適応した生体膜を持つリン欠乏耐性植物の分子育種のための基盤的研究として、リン欠乏応答としての生体膜脂質の質的転換の機構を明らかにし、低リン酸条件に適応した植物の育種を目指す。本年度は以下の研究を行った。 1.前年度、リン酸欠乏時におけるtypeB MGDG合成酵素遺伝子のリン酸欠乏応答にオーキシンが必要であることが示されたが、そのオーキシン要求性が、リン酸欠乏時の膜脂質の変換そのものにも見られることが明らかになった。また、リン酸シグナルと同様な効果を持ちながら、植物が利用することのできない亜リン酸をリン酸と同時に植物に与えるとTypeB MGDG合成酵素の発現や膜脂質の変換が全く認められないことが判った。この際オーキシンを与えてもType B遺伝子の発現は全く起こらなかった。このことは、リン酸欠乏時の膜脂質の転換にはオーキシンとPiシグナルの両方が必要であることを示している。 2.前年度、リン酸欠乏時に応答するphospholipaseC遺伝子(NPC4)を同定し、この酵素が実際、リン酸欠乏条件でのリン脂質分解活性の増大に寄与していることを示した。本年度はこのNPC4が細胞膜に存在することを証明し、これらの結果をまとめてJBCに報告した。
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