本研究では、植物-微生物-土壌が相互に作用する複雑系を対象として、十分な研究実績を持つ研究者が共同し、遺伝子組換え体のフィールドレベルの耐性発現を目指して研究を進めている。本年はさらに、香港大学の研究者を研究協力者として加え、以下の各点に関して研究を進めた。1)遺伝子組換え体の作成を担当する小山は、低リン酸耐性ニンジン培養細胞とクエン酸放出植物であるシロバナルーピンの有機酸放出を分子レベルで解析して、プロトン放出に関与するATP分解酵素の分子生理学的な意味を明らかした。2)土壌微生物系を担当する江澤は有機酸放出能の異なる植物に形成された菌根におけるリン酸獲得・輸送能を評価する実験系を確立し、リンゴ酸放出能力が異なるNIL小麦への菌糸の着生を調べ、少なくとも有機酸放出による炭素ロスが存在しないことを明らかにした。3)一方、東北大木村は、フィリピンなどの国外も含めて酸性土壌を調査検討して、クエン酸放出とリン可溶化のフィールドレベルでの知見を集積した。尚、香港大学のLim博士はが単離した、糸状菌由来のリン酸フォスファターゼ遺伝子を組換えたシロイヌナズナを作成し、その生理的特定に関する研究に着手した。次年度は、これらの相互作用に関する研究を展開する。
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