岐阜大学小山は当初計画に従って、海外共同研究者として有機態の難溶性リン酸の可溶化の分子機構の研究経験を持つ香港大学Lim助教授の協力で(平成17年5月来日)、さらに難溶性リン酸を可溶化する能力も付与した。具体的には、ICDH発現抑制個体で、フィターゼ遺伝子を2重組換えした。この組み換体は、インビトロ系でリン酸利用能力が向上した。クエン酸放出とフィターゼ放出の相乗作用について、次年度解析する材料を獲得した。 北海道大学江沢は、菌根形成が有機酸分泌によるリン酸可溶化・獲得機能に及ぼす影響について明らかにするために、Al応答性有機酸分泌系統および非応答性系統コムギを酸性土壌において栽培し、Al応答性リンゴ酸輸送体遺伝子の発現、有機酸分泌量および宿主リン酸吸収量に及ぼす菌根形成の影響について調べた。Al耐性品種(NIL)ET8は感受性種(NIL;ET7)に比べて、酸性土壌でのリン酸吸収能力が向上した。菌根の着生は、相加的に作用することから、有機酸放出による炭素ロスは少ないことがわかった。 宮城大学木村は、土壌との関連に関して研究を進めた。本年は、酸性土壌で問題となる銅イオン、希土類元素などに対象を広げ、多元素同時分析を実施した。この中で、それぞれのイオンの吸収に差を持つ変異体の原因遺伝子の生理機能に関する知見を集積した。 以上の解析を通じて、最終年度における低リン酸耐性植物の評価に関する基礎的な実験項目を期間内に完了することができた。
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