根から有機酸を放出する現象は、植物の不良環境抵抗性に深く関わる形質である。これは、有機酸が金属イオンと錯体を形成することに基づき、アルミニウムなどの障害金属の解毒とリンの可溶化するためである。しかし、この機構は炭素ロスなどの負の側面を持つことや、微生物と共存する土壌中での有効性及び土壌との化学反応性の点から、自然環境での有効性を検証する必要があった。岐阜大学小山は、植物生理学の立場から当初計画に従って、シロイヌナズナのリンゴ酸輸送をモデルとして、有機酸放出機構を解析した。シロイヌナズナのリンゴ酸トランスポーターはリン酸化を介して誘導と活性化することがわかった。また、根の内部及び根端で発現することもわかり、炭素経済の点からの解明が進んだ。北海道大学江沢は、菌根形成が有機酸分泌によるリン酸可溶化・獲得機能に及ぼす影響について明らかにするために、Al応答性有機酸分泌系統および非応答性系統コムギを酸性土壌において栽培し、Al応答性リンゴ酸輸送体遺伝子の発現、有機酸分泌量および宿主リン酸吸収量に及ぼす菌根形成の影響の解析を完了して、菌根の着生は、相加的に作用することを明らかにした。宮城大学木村は、土壌との関連に関して研究を進めた。本年は、特に注目されるのは、有機酸放出能力を強化した組換え体では、微量要素の吸収も改善することである。これらの知見により、有機酸放出能力強化による品種改良の正当性が検証できた。
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