研究課題
(1)リポタンパク質をペプチドグリカンに共有結合させる酵素の同定と解析主要外膜リポタンパク質Lppがペプチドグリカンと共有結合して形態維持を担っていることが見いだされて以来、それを司る酵素の同定に多大な努力が費やされてきたが、未だに明らかにされていなかった。申請者は昨年度にこの反応を解析するin vitro系を開発し、同定の道を開いていた。そのin vitro系を用いて、本年度、Lpp-ペプチドグリカンリガーゼLplAを見いだした。LplAはペリプラズム空間に存在する分子量32000の単量体タンパク質で、LppのC末端のリジン残基とペプチドグリカンのジアミノピメリン酸を結合させる酵素であることが明らかになった。さらに、lplAの欠失変異株ではLppがペプチドグリカンと結合できず、生育が阻害された。これらの結果から、LplAはLppとペプチドグリカンとの共有結合を触媒する酵素であることが明らかになった。LplAには3種類のパラログが存在しており、すべてを精製し機能を解析した結果、LplBにはLpp-ペプチドグリカンリガーゼ活性が見いだされたが、LplCとLplDには今のところ活性が見いだされていない°しかし、Lp1Cを過剰発現する菌株にはリガーゼ活性が見いだされたことから、大腸菌は環境変化に応答してこれらのリガーゼを使い分けている可能性が示唆された。今後は、Lpp-ペプチドグリカンリガーゼの構造などを明らかにし、阻害剤のスクリーニング系を確立して、化学療法剤の開発につなげたい。(2)リポタンパク質の局在化に関与するLolAとLolBに対する阻害剤の探索大腸菌の生育に必須のLolAとLolBに対する低分子化合物のスクリーニング系を確立し、阻害物質を探索した結果、2種の候補物質を見いだした。これらの物質はμMオーダーで大腸菌の生育とリポタンパク質の局在化を強く阻害した°また、これらの物質は大腸菌の染色体の分配を阻害することが示された°これらの結果は、これらの物質がLolAとLolBを標的とする化学療法剤の候補物質として期待できることを示している。
すべて 2007 2006
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