液胞は糸状菌細胞でもっとも大きなオルガネラであり、代謝産物の貯蔵、細胞質イオン恒常性の維持、生体高分子の分解、再利用などの機能をもつ。また、細胞伸張、先端生長、タンパク質分泌、外界のpH感知等にも密接な関連をもつと推定されている。本研究は、糸状菌における液胞の機能を分子レベルで解析を行うことを目的として行った。まず、麹菌(A.oryzae)の液胞形態の可視化、液胞のダイナミックな動態の解析のための基本的なツールとして、Aovam3(酵母VAM3ホモログ)、Aovps10(酵母VPS10ホモログ)の2遺伝子を単離し、詳細な解析を行った。液胞膜SNAREと推定されるAovam3とEGFPとの融合遺伝子を作成して、共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ、細胞部位による液胞形態の差異、生きた細胞で液胞膜がダイナミックに融合、分裂する様子の観察に成功した。Aovps10とのEGFP融合遺伝子の発現では、液胞内部とprevacuolar compartmentと思われる部位に蛍光が観察された。Aovps10遺伝子破壊により、液胞内カルボキシペプチダーゼ(CPY)の液胞への輸送に欠損が認められた。また、cpyA-EGFP融合遺伝子発現株(液胞に蛍光が観察される)を親株として、蛍光が培地中にミスソートするVPS変異株にコスミドライブラリーを導入することにより、変異遺伝子の同定を試み、酵母DNF3遺伝子のホモログ(Aodlnf3)を単離した。
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