RNase GによってmRNAの安定性が制御されているものとして、これまでにadhE(アルコールデヒドロゲナーゼ)とeno(エノラーゼ)が見い出されている。これらは共に糖代謝に関わる酵素をコードしていることから、RNase G欠損変異株(rng::cat)の糖代謝能を調べたところ、変異株はグルコース最少培地で増殖できないことを見い出した。この現象は、MC1061株の遺伝的背景でのみ観察されたことから、その原因を探ったところ、rng変異に加えてcra変異(catabolite repressor activator:糖代謝のレギュレーター)が必要であることが判明した。これらのことから、RNase Gは糖代謝を含めた中央代謝系の酵素の遺伝子発現制御に関与していると思われた。また、RNA結合タンパク質HfqによってmRNAの安定性や翻訳効率が制御されている遺伝子を探索するためにhfq変異株で発現量が変化しているタンパク質を検索した。この結果、鉄結合タンパク質Dpsタンパク質と酸耐性に関わるGadA、GadBタンパク質がhfq変異株で発現が低下していることを見い出した。dps遺伝子をプラスミドとして導入したところ、hfq変異株の過酸化水素感受性が部分的ながら回復されたことから、Dps欠損により細胞内のフリーの鉄イオンの濃度が上昇しFenton反応が誘起されることにより、過酸化水素感受性が引き起こされていると思われた。
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