大腸菌のエンド型リボヌクレアーゼRNase Gは16S rRNAの成熟と一群のmRNAの分解に関与している。RNase GによるmRNAの安定性制御のメカニズムを明らかにするために、RNase Gの基質の一つであるadhE mRNAの5´-非翻訳領域の様々な欠失変異体を構築し、それらのRNase G依存性を調べた。その結果、adhE mRNAの-125〜-145領域を欠失したmRNAはRNase Gによる分解を受けなくなることが判明した。このことから、この領域にRNase Gの基質認識配列または切断部位があると思われた。また、RNase G欠損変異株がグルコース最少培地で増殖できない原因を探った。RNase G変異株では解糖系酵素のmRNAの安定化によりピルビン酸の過剰合成が起きており、その結果引き起こされたバリンの蓄積によって誘導されるイソロイシン欠乏が増殖抑制の原因であることを明らかにした。この知見をもとに、RNase G欠損株から誘導したバリン耐性変異株を用いたピルビン酸及びバリンの生産法を開発した。さらに、RNA結合タンパク質Hfqの欠損変異株では、酸耐性に関わるグルタミン酸脱炭酸酵素GadA、GadBの発現誘導が欠損しており、変異株は酸性環境下での生存能が野生株と比べて著しく低下していることを見い出した。これよりHfqは大腸菌の酸耐性機構に関与していることが示唆された。
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