研究概要 |
ホルムアルデヒド固定反応を触媒するリブロースモノリン酸経路の2つの鍵酵素ヘキスロースリン酸シンターゼ(Hps)とホスホヘキスロイソメラーゼ(Phi)は、細菌からアーケアまでに普遍的に存在する。本研究では細菌のHps,Phi遺伝子の発現調節機構およびアーケアのHps,Phiの触媒機能や生理的意義に関する知見を得た。 1)細菌におけるhps/phiオペロンの発現調節機構:メチロトローフ細菌Mycobacterium gastriMB19および非メチロトローフ細菌である枯草菌のhps/phiオペロン上流に位置する調節タンパク質(RmpR,HxlR)について、そのDNA結合特性を解析した。特に枯草菌のHxlRタンパク質はhps遺伝子上流のDNA配列に特異的に結合し、ホルムアルデヒド依存的なhps/phiオペロンの発現に関わる新規転写活性化因子であることを明確にした。 2)アーケアのHps,Phiの機能解析:超好熱性アーケアPyrococcus horikosiiではHpsとPhiが単一ORFにコードされ、融合酵素を生産する。Hps部分、Phi部分と融合酵素を大腸菌で生産し、それぞれの触媒機能を明らかにした。HpsとPhiの融合により、融合酵素が膜画分に局在すること、Phiの耐熱性が向上すること、触媒効率が向上することなど融合酵素の特徴を明確にした。一方、メタン生成菌Methanosarcina mazeiにHpsを含む2種のORFを見出した。その1つは、Hpsとホルムアルデヒド活性化酵素(Fae)に相当する読み枠からなっていた。融合遺伝子、hps、faeそれぞれを大腸菌で発現させ、精製して性質を明らかにした。いずれのアーケアにおいてもHpsおよびPhiはホルムアルデヒドの固定反応だけでなく、その逆反応であるリボース5-リン酸の供給という糖代謝での重要な役割をもつ可能性が示唆された。
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