研究課題
基盤研究(B)
本研究では、主として、加圧カーボネーション(HPC)下における殺菌メカニズムの解明を行った。供試菌S.cerevisiae(JCM 7255)を用いてHPC処理中の細胞内pH(pHin)を測定した。30℃、6.5MPaのHPC処理によりpHinは1分間経過後3.6に、その後3.2まで低下した。pHinに及ぼすpHexの影響は認められなかった。このとき、細胞府ATPは95%以下まで減少し、H+-ATPaseの活性が消失することが判明した。H+-ATPaseの阻害剤であるDCCDを微生物縣濁液に添加してHPC処理を行ったところ、DCCD添加量に比例してATPの減少量は低下したが、微生物の死滅速度はDCCD添加量に依存して大きくなった。このことはHPC処理下での死滅速度はH^+-ATPaseの活性に大きく依存することが判明した。さらに、HPC処理により解糖系の鍵酵素であるfructose-1,6-bisphosphataseがほぼ完全に失活したことから、HPC処理が解糖系を著しく損傷させることが明らかと成った。以上の結果からHPC処理の殺菌メカニズムを以下のように考えた。(1)細胞膜を透過したCO2分子が細胞内で炭酸を生成し、次いで炭酸の電離により放出されるH+によりpHinが低下する。(2)pHinの低下に伴ってH+-ATPaseが活性化し、ATPの加水分解と共役して細胞内H+の排出を行う。(3)解糖系の著しい損傷のためにATPの生産が停止状態にあるなか、H+排出によりATPが消費されるために細胞内ATPは枯渇状態に陥る。(4)ATPの枯渇は、細胞内のH+排出を困難にするために細胞内pHの低下が進行する。生理機能の崩壊を招き、ついには細胞死に至る。上記のような死滅メカニズムを想定し、現在風味が重要な品質因子となっている各種食品に対して加圧カーボネーション殺菌を適用しつつある。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 69巻 11号
ページ: 2094-2100
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Vol.69,No.11
Journal of Brewers Society of Japan 99巻 3号
ページ: 208-214
Journal of Brewers Society of Japan Vol.99,No.3