タンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドの構造類縁体であるアセトキシシクロヘキシミド(E-73)は、IL-1による転写因子NF-κBの活性化を抑制せず、TNF-αによるNF-κBの活性化を選択的に抑制する。E-73は、TNFレセプター1に会合するアダプタータンパク質TRADD、RIP1やTRAF2の発現量に作用しないが、細胞表面のTNFレセプター1のダウンレギュレーションを誘導する。ヒト肺がん腫A549細胞をE-73で処理すると、濃度依存的ならびに時間依存的に、TNFレセプター1の細胞における発現量が減少し、低分子量化したTNFレセプター1が培地中に増加することがウェスタンブロッティングによって観察された。メタロプロテアーゼ阻害剤GM6001やTACE(TNF-α converting enzyme)阻害剤TAPI-2でA549細胞を前処理すると、E-73によるTNFレセプター1の培地中への蓄積が抑制されたが、TNFレセプター1の細胞における発現量の減少は抑制されなかった。一方、TNFレセプター1のエンドサイトーシスを抑制することが報告されているトランスグルタミナーゼ阻害剤モノダンシルカダベリンは、E-73によるTNFレセプター1の細胞における発現量の減少を顕著に抑制したが、培地中へのTNFレセプター1の放出に影響しなかった。以上の結果から、E-73は、TNFレセプター1のエンドサイトーシスおよびTACEによるTNFレセプター1のシェディングを誘導することによって細胞表面のTNFレセプター1の発現量を減少させ、TNF-αに対するA549細胞の反応性を低下させることが明らかとなった。
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