研究概要 |
緑藻クラミドモナスにおける無機炭素濃縮機構(CCM)の実体と誘導機構に関して明らかにする。また、CCMの調節に中心的役割を果たす、シグナル伝達因子CCM1 (Fukuzawa et al.,PNAS 2001)の修飾と細内極在性、タンパク質間相互作用の解明を目的とする。 (1)約5万個のESTクローン配列データを分類して、独立なクローン約1万個からなるcDNAマクロアレイを作成した。 (2)野生株とccm1変異株とを高CO_2条件および低CO_2条件で培養し、mRNAサンプルを調製し、cDNAを合成した。それぞれをcDNAアレイに対してハイブリダイゼーションを行ない、2サンプル間で発現レベルの差が2.5倍以上の差があったものを選抜した。 (3)遺伝子発現プロファイルを網羅的に比較し、51種類の低CO_2誘導性遺伝子および、32種類の低CO_2抑制性遺伝子を見い出した。低CO_2誘導性遺伝子のほとんとがccm1変異株で発現レベルが低下しており、低CO_2シグナル伝達において、調節因子CCM1が総括的に働いていることを示唆した。また、低CO_2誘導性遺伝子の中に、新たな遺伝子LciAおよびLciBを見い出した。(論文投稿中) (4)遺伝子タギング法により、低CO_2条件での炭酸脱水酵素遺伝子Cah1の発現が異常になった変異株を単離し、新たなCO_2シグナル伝達因子Lcir1を同定した。(論文投稿中) 次年度は、1)CCM1のジンクフィンガーと予測される部位への亜鉛の結合性および、そのモル比を原子吸光計で明らかにする。2)CCM1抗体を作成し、CCM1と相互作用をする因子のスクリーニングを行ない、これが得られる場合には構造、発現および機能について明らかにする。3)新しく単離した遺伝子についてタンパク質の量的変動の検出および細胞内極在性を調べる。4)DNAフットプリント法を用いて、LClR1の結合配列を決定する。
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