緑藻クラミドモナスはCO_2濃縮機構(CCM)によって低CO_2環境でも生育できる。このCCMは、低CO_2濃度で誘導され、高CO_2濃度で抑制されるので、CCMを担う無機炭素輸送体の遺伝子は、CO_2欠乏条件で発現誘導されると考えられる。そこで、CO_2欠乏条件でもCCMを誘導せず高CO_2要求性を示す変異株ccm1株から、その原因遺伝子を同定した。CCM1は、CO_2条件に関わらず恒常的に発現しており、CO_2濃度の変化をCO_2応答性遺伝子に伝える調節因子でると推定した。CCM1の下流にある遺伝子には無機炭素輸送体をコードする遺伝子があると考えられたので、CO_2条件変動に伴う発現プロファイル、さらに野生株とccm1株のCO_2欠乏条件での発現プロファイルを比較することで、発現がCO_2欠乏依存性を示す遺伝子ならびにCCM1依存性を示す遺伝子を明らかにした。CO_2欠乏条件1時間で、Cah1を含むCO_2欠乏誘導性遺伝子51個の発現が誘導された。ccm1欠損株では、51個全てのCO_2欠乏誘導性遺伝子が発現の低下を示した。従って、CCM1はCO_2欠乏誘導性遺伝子の全てを調節するマスター因子であることが判明した。CO_2欠乏誘導性遺伝子の中から、葉緑体胞膜の亜硝酸輸送体NAR1と相同性を示す陰イオン輸送体をコードしうる遺伝子LciAを見出した。LCIAの発現は窒素環境の変化には応答せず、CO_2濃度に依存していた。これ以外にも葉緑体胞膜に局在性を予測された遺伝子(Cpp1等)が得られたので、それぞれの遺伝子発現を抑制する株を取得するために、RNAi組換え体を選抜している。LCIAならびにCPPの発現抑制によってCO_2輸送能が低下すれば、その遺伝子が無機炭素輸送体をコードすることの証明となる。
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