研究概要 |
(1)中性セラミダーゼの構造に関する研究 ラット中性セラミダーゼのN-末に存在するセリン、スレオニン、プロリンに富んだドメインが高度にO-グリコシル化を受けること、このドメインが本酵素を形質膜II型蛋白質として発現させる必要十分条件であることを様々な変異体酵素を作製して明らかにした。また、C-末にはバクテリアからヒトに至るまで保存されている3つのアミノ酸残基が存在し、本酵素のホールディング、細胞内移行に重要な役割を果たしていることを見いだした。 (2)中性セラミダーゼの機能に関する研究 中性セラミダーゼが細胞表層のセラミド代謝に関与していることを明らかにした。また、細胞表面で産生されたスフィンゴシンの一部は細胞表面でスフィンゴシン-1-リン酸(SIP)に変換され、SIPの受容体であるEdgのリガンドとなることを見いだした。ゼブラフイッシュ初期発生系において中性セラミダーゼ遺伝子をノックダウンすると血管新生が著しく遅滞することを見いだした。興味深いことに、この血管新生不全は、受精卵に中性セラミダーゼmRNA、スフィンゴシンS1Pをマイクロインジェクションすることによりほぼ完全に回復した。一方、Edgをノックダウンすることによっても中性セラミダーゼノックダウン胚と同様に血管新生の不全が惹起されたが、S1Pのマイクロインジェクションでは回復しなかった。以上のように、ゼブラフイッシュの初期発生において、中性セラミダーゼはS1Pシグナリングを介して、血管新生に深く関わっていることを強く示唆する結果を得た。 (3)エンドグリコセラミダーゼの構造に関する研究 本酵素の構造をセルラーゼを鋳型にしたホモロジーモデリングによって調べた。その結果、本酵素はセルラーゼ(β-1,4-glucanase)と同じくα-ヘリックスとβ-シートを交互に7回繰り返すTIM-バレル構造を有している保持型の酵素であることが明らかになった。しかし、セルラーゼとは基質が結合する溝の構造が異なり、糖脂質に特異的に作用することが示された。また、点変異を用いた実験により、セルラーゼの触媒部位で保存されている7つのアミノ酸残基が全て保存され、本酵素の触媒部位を形成していることが分かった。
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