研究課題
基盤研究(B)
根寄生雑草オロバンキ(Orobanche)およびストライガ(Striga)の宿主植物が分泌する発芽刺激物質ストリゴラクトンを分析した。イネ科植物の主要なストリゴラクトンの1つは、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)の菌糸分岐誘導物質として単離構造決定されたデオキシストリゴールであり、双子葉植物ではオロバンコールが主要なストリゴラクトンの1つであることが分かった。その他に少なくとも10種類以上の新規ストリゴラクトンの存在が確認された。また、AM菌と共生しないアブラナ科およびアカザ科の植物やアカマツなどの樹木もストリゴラクトンを分泌していることから、AM菌の宿主認識にはストリゴラクトン以外の要因の関与が示唆された。アカクローバーからのオロバンコール分泌は、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウムの栄養素の内、リン酸欠乏条件下でのみ顕著に促進されることをLC/MS/MS分析によって明らかにした。これは、栄養条件がAM菌および根寄生雑草の宿主認識シグナルであるストリゴラクトンの分泌量に影響することを明確に示した最初の例である。また、アカクローバーでは、カロテノイド生合成阻害剤であるフルリドン処理によってオロバンコール分泌量が顕著に低下し、ストリゴラクトンがカロテノイドを経て生合成されるという仮説を支持する結果が得られた。なお、フルリドンは、根寄生雑草の1種であるStriga asiaticaの発芽を直接誘導し、さらに発芽した種子に吸器様の形態変化を誘導した。シロイヌナズナのDNAマイクロアレイ解析から、ストリゴラクトン生合成および代謝に関与する可能性の高い遺伝子として、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ遺伝子2種類と1種類のABCトランスポーター遺伝子を同定した。今後の研究の深化、発展を通して、根圏における寄生・共生の相互作用の解明が期待される。
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