研究概要 |
(1)放線菌類のヒスタミン脱水素酵素(HmDH)の構造解析と細胞内電子移動特性 HmDHは6-S-cyteinyl-FMNおよび4Fe-4Sクラスターを分子内酸化還元中心とする非常にまれな酵素であることを明らかにした.また基質による還元(モノマー当たり2電子還元)状態の吸収スペクトルがpHに大きく依存することがわかり,2つの酸化還元中心の酸化還元電位のpH依存性から説明できる可能性を示した.さらに,基質による還元反応をストップドフロー法により追跡し,その速度解析を行った.一方,HmDHの大腸菌での大量発現系で,活性種の発現率を,培養条件を検討することにより,当初のほぼ100%にまで向上させた.また,部位特的変異を試み,さらに電子受容体特性を利用して,ヒスタミンに対する基質選択性の向上に成功した. (2)キノヘモプロテインの直接電子移動系電極反応 脱窒菌が産生するキノヘモプロテインアミン脱水素酵素(QH-AmDH)と電子受容体電子移動反応に及ぼすイオン強度の効果を検討し,その近傍の正電荷が,電子移動反応に大きく寄与することがわかった.QH-AmDHの電極での直接電子移動反応が観測できない理由を,その構造との関係で論じた.今後,さらに,電極の微細電荷の調整が必要であると考えている.一方,酢酸菌由来のキノヘモプロテインアルコール脱水素酵素(QH-ADH)の酸化還元電位が,環境により変化することを明らかにした. (3)バイオセンサ,バイオ電池への展開 組換え体HmDHを用いてヒスタミンバイオセンサを構築した.また,これら脱水素酵素反応系等をアノード系触媒とし,またビリルビンオキシダーゼ(BOD)触媒のカソード極と組み合わせたバイオ電池の基本特性の評価を行った.BOD触媒に関しては,直接電子移動反応が電極基材特性に大きく依存することがわかり,吸着量と触媒能との関係を論じた.これらの反応系の基礎検討をもとに,電流密度的には,実用を視野に入れることができるまで向上させることに成功した.また,バイオ電池の試作も行った.
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