血管新生は既存の血管から新たな血管ができる現象であり、内皮細胞の増殖、遊走および管腔形成の3過程を経て進む。この現象は癌、動脈硬化、糖尿病性網膜症、リュウマチ性関節炎など多くの難治性疾患の発症と進展に深く関与する。たとえば癌の場合、新生血管から栄養を受け取ることで増殖し、この血管を通って転移する。したがって、血管新生をターゲットとした癌治療が近年注目を集めている。またこの様な血管新生病の食品成分・食品素材による予防は大きな社会的関心の的でもある。 我々はこれまでの研究から、共役トリエン型脂肪酸やトコトリエノールに従来の既知医薬品より強力な血管新生阻害活性があることを明らかにしてきた。また、過酸化因子として糖化産物であるアマドリ型糖化リン脂質の存在を証明し、この糖化リン脂質が血管新生を強く誘発促進する因子であることを確認してきた。 本研究では、1)共役トリエン脂肪酸を経口投与した癌細胞移植ヌードマウスを用い、共役トリエン脂肪酸の癌組織の退縮を確認するとともに、その血管新生阻害の機構を明らかにした。2)ビタミンE同族体のトコトリエノールの血管新生阻害の機構を培養細胞実験および動物実験を用いて明らかにした。3)血管新生促進作用を有するとして発見された糖化アミノリン脂質について、培養細胞系で血管新生の促進因子であることを明らかにすると同時に、リン脂質の糖化を阻害する食品成分のスクリーニングを行った。 これらの知見を基盤とし今後さらに発展させることで、血管新生病といわれる動脈硬化症、糖尿病、癌を予防する食品成分・食材の確立につながると大いに期待される。
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