inhibitory protein κBのα-isoform (IκBα)のN-末から45番目のアミノ酸残基であるメチオニン(Met45)が、タウリンクロラミン(TauCl)で酸化されメチオニンスルフォキサイド(Met=0)になると、刺激に呼応したIκBαの分解が抑制され転写因子であるnuclear factor κB (NFκB)の活性化が阻害されることを発見した。IκBαのsignal receiving domain (SRD)には、Met45以外に13番目と37番目にメチオニン残基(Met13、Met37)が存在する。Met13とMet37もMet45同様にTauClで酸化されるか、これら2つのメチオニン残基の内一つずつの残基を含む短いペプチド2種を合成し検討した。in vitro処理後mass spectrometryで分析してみた。どちらのペプチドの分子量もおよそ16増加していることがわかり、Met13もMet37も試験管内ではTauClで酸化されMet=0になりえる事が示唆された。次に、Met13やMet37をAlaに変異させた点変異IκBα(1-280)M13AとIκBα(1-280)M37AをHEK293細胞に発現させ、TauCl処理でIκBαのバンドシフトが観察されなくなるかどうか検討した。Met13やMet37をAlaに変異させてもバンドシフトが観察され、細胞内ではメチオニン残基が酸化されないか、酸化されてもバンドシフトを起こさない事が示唆された。次に、Met13とMet37のNFκB活性化への関与をレポーターアッセイで検討した。IκBαM37Aを発現させてもTauCl処理後にNFκB活性化の回復が観察されなかったが、IκBαM13Aを発現させた時はNFκB活性化の回復が少し観察された。結論として、TauClによる活性化の阻害は、主にMet45の酸化であるが、Met13も僅かながら関与していることが分かった。よって、Met13は酸化されてもバンドシフトしないで、NFκB活性化の阻害をする可能性が示唆された。また、IκBαのリン酸化に対するTauClの効果をp-IκBα抗体で検討した結果、TauC1はIκBαのリン酸化を阻害することが分かった。よって、TauClによる活性化の阻害は、IKKによるIκBαのリン酸化の阻害であり、ユビキチネーションに必要なF-boxのIκBαへの結合阻害ではないことが分かった。最近の研究で、IκBα/NFκB複合体は細胞質と核の間を行き来しており、核外移行シグナルがIκBαのN-末の45-54のアミノ酸配列であることが分かってきている。TauClは核内のIκBαを酸化できるが、核外移行の疎外はしないことが分かった。また、TNFα刺激によるIκBαのリン酸化は核内でも起きるようであり、もしかするとIKKが核内に存在する可能性が示唆された。 喘息の発作の際に好酸球が気管支に集まることが知られている。タウリンが気管支に集まる好酸球を減らし、喘息の症状を軽減することが報告されている。好酸球にはeosinophil peroxidaseが発現しており、この酵素はH_2O_2とBr^-からHBrOを産生する反応を触媒する。タウリンはHBrOとも素早く反応してタウリンブロマミン(TauBr)となる。このTauBrがIκBαのバンドシフトを引き起こすことが観察され、タウリンは好酸球においても好中球と同様に過剰炎症の抑制に機能している可能性が示唆された。現在、データーを集めているところである。
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