転写因子Nuclear Factor κB(NFκB)は、IκBαと結合しNFκBの核移行シグナルがマスクされた状態で細胞質に存在している。TNFαなどの細胞外刺激によってIκBαがプロテアソームによって分解される結果、NFκBは核移行し転写を促進する。本研究は、IκBαのMet45が、好中球においてタウリンと次亜塩素酸から産生されるタウリンクロラミン(TauCl)によって酸化され、IκBαの分解が抑制とその結果としてNFκB活性化の阻害が起きるという分子機構の発見に基づいている。研究(1)IκBαは核内にも存在することが示唆されている。TauClによる核内におけるNFκB活性化制御の可能性を検討したところ、TNFα刺激による核内IκBαのリン酸化が阻害されることが示唆された。IκBαの他のメチオニン残基は試験管内ではTauClで酸化される箇所が観察されたが、細胞レベルでは酸化されず、Met45が唯一の酸化箇所である事が分かった。内研究(2)酸化メチオニンを還元する酵素MsrA・Bの存在が報告されている。これらのcDNAクローニングを行い、株化細胞に発現させた。面白いことに、TauClによって酸化されたIκBαがMsrA・Bの基質になっていることを示唆された.但し、Msrの発現でTauClに因るIκBαのバンドシフトが抑制されるが、NFκBの活性化は依然阻害されることより、TauClには他の箇所でのinteractionが示唆された。研究(3)好酸球に発現しているeosinophil peroxidaseは、H_2O_2とBr^-からHBrOを産生する反応を触媒する。タウリンは次亜臭素酸とも反応し、タウリンプロマミン(TauBr)となる。このTauBrがIκBαの酸化を引き起こす可能性が示唆された。しかも、TauBrはNFκB活性化に対し抑制的に働いた。
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