研究概要 |
Inhibitory protein κB α-isofbrm(IκBα)のN-末から45番目のアミノ酸残基であるメチオニン(Met45)が、タウリンクロラミン(TauCl)で酸化されメチオニンスルフォキサイド(Met=0)になると、刺激に呼応したIκBαの分解が抑制され転写因子であるnuclear factor κB(NFκB)の活性化が阻害されることを発見した。好中球は細菌を貧食し、活性酸素を放出して殺菌する。貧食はもう一つの細胞内イベントであるNFκBの活性化を引き起こし、炎症性サイトカインを細胞外に放出する。タウリンはこの2つのイベントの調節因子として働き、殺菌の終了と共に炎症性サイトカインの放出を適時に停止し、過剰炎症を阻止しているようだ。NFκB活性化の阻害は、更には、役割を果たし終えた好中球の死を促進している可能性がある。そこで、細胞株HL-60をTNFαで刺激するときにTauCl処理すると、細胞死が誘導された。この細胞死はカスパーゼ8,3の活性化を伴うアポトーシスであることが確認された。TauClでNFκB活性化が阻害されると、カスパーゼ8の阻害タンパク質FLICE inhibitory protein s-isoform(FLIPs)の発現が抑制された。このFLIPsの発現抑制がカスパーゼ8の活性化とアポトーシス誘導に繋がっていると考えられる。 喘息の発作の際には、好酸球が気管支に遊走することが知られているが、タウリンはこの好酸球数を減らし、喘息の症状を軽減することが報告されている。好酸球にはeosinophil peroxidaseが発現しており、この酵素はH_2O_2とBrからHBrOを産生する反応を触媒する。タウリンはHBrOと素早く反応してタウリンプロマミン(TauBr)となる。このTauBrもIκBαを酸化することが可能であることを明らかにした。しかも、TauClとTauBrのIκBαに対する酸化力を比較したところ、TauBrの方がやや酸化力が強いことが確認された。したがって、タウリンは好酸球においても好中球の場合と同等、もしくはそれ以上に過剰炎症の抑制に機能している可能性が示唆された。
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