研究概要 |
降庄ペプチドであるVal-Tyrの活性発現挙動の解明を通して、生体内での活性ペプチドの作用機序を明らかにすることを試みた。本年度においては1)作用臓器の特定化:活性ペプチドの標的臓器の解明と、2)加齢疾病モデル動物での活性発現性、3)副作用:ブラジキニンの蓄積(空咳)を伴わないペプチド構造をN-ドメイン特異的基質を用いて網羅的に明らかにすることを試みた。 1)降圧ペプチドの作用部位の特定化 (1)適齢の異なるSHR(11,18、24適齢)に対する降圧ペプチドVYの急性投与試験を実施し、投与9時間までの血圧観察及び関連臓器へのVY蓄積性を検討した結果、血圧亢進期である18週齢でもっとも顕著に血圧が低下し、加齢とともにその効果は減弱することが判明した。本知見は、発症初期からの機能性ペプチドの摂取がより有効であることを示唆するものである。 (2)血液及び臓器での投与ペプチド量の動態を把握し、アンジオテンシンII量、ACE活性をもとに降圧挙動を評価した結果、降圧ペプチドの標的臓器は大動脈血管及び腎臓であり、intactに組織へと移行・蓄積することが判明した。総吸収量は3mg/kg投与で350ng前後であり、本吸収量は加齢とともに減弱する傾向があることを初めて明示し得た。さらに両臓器のレニン-アンジオテンシン系は蓄積挙動と合致して9時間まで長期的に抑制されることが判明した。 2)副作用併発の解明 N-domain特異的擬似基質AcSDKPを用いた降圧ペプチドのN-domain阻害活性測定を実施した。まず、65種類にわたるペプチド体を合成し、その全てに対してN-domain阻害活性を測定した結果、IY,IPP,IWなどのペプチドがブラジキニンを過度に蓄積する可能性があるペプチドであることが示され、ペプチド配列によってACEに対する阻害機構が異なることを初めて明らかにすることができた。
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