研究分担者 |
宝月 岱造 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10107170)
吉丸 博志 独立行政法人森林総合研究所, 生態遺伝研究室長 (20353914)
清藤 城宏 山梨県森林総合研究所, 副所長(研究職) (40359245)
後藤 晋 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (60323474)
齊藤 陽子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (00302597)
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研究概要 |
東京大学北海道演習林(以下北演)においてトドマツ天然林における択伐が遺伝的多様性に及ぼす影響について、核および葉緑体のSSRマーカーを用いて調査した。その結果、北演のトドマツは北海道内の他の地域のトドマツより多様性が高いこと、高標高の林分では遺伝的多様性が低くなることなどが明らかになった。また、核SSRの多様性、特に、希な対立遺伝子数が択伐により増加する傾向が認められ、長期的には対立遺伝子の減少につながるものと予想された。次に、東京大学千葉演習林(以下千葉演)において異なる発達段階にあるモミ4林分の成木について、核SSRマーカーを用いて遺伝解析を行った。モミ成木がおおよそ90.本となるよう調査地を設定した結果、その面積は1,920m^2〜48,900m^2と大きく異なった。その結果、同じ個体数でも広い面積に広がっている林分で遺伝的多様性が高いと考えられた。また、10m前後の範囲で遺伝構造が検出されたが、最も発達し個体間距離の大きい林分では見られず、林分の発達に伴う構造の崩壊が推定された。さらに、北演の孤立したアカエゾマツ12集団について,SSRマーカーにより集団遺伝解析を行った。その結果、高標高林分ほど遺伝的多様性が高いことが明らかになった.標高と遺伝的多様性に関しては,トドマツとは異なる結果となった。また,集団間の遺伝的距離と地理的距離には弱い相関があり,距離による隔離が認められた。また、立地別に見ると、湿地に分布する集団は全体的に遺伝的多様性が低いことが示された。 ウダイカンバについて、現在起っている遺伝子流動を把握するため、樹上種子のSSRマーカーによる遺伝解析を行い、林分の成立経過による違いを検討した。また、オノオレカンバについては、SSRマーカーにより国内13集団と韓国3集団、中国1集団について、遺伝分析を行なった。その結果、集団内の遺伝的多様性は国内集団が韓国・中国集団よりも高く、また、5集団において近交係数の0からの有意な偏りが検出され、隔離分布により集団内で近親交配がおこっていることが示唆された。集団分化程度はやや高く、有意な距離による隔離が検出された。
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