研究課題
基盤研究(B)
現在のわが国においても、天然林の伐採が少なからず行なわれているが、それが伐採対象樹種に及ぼす影響はあまり明らかになっていない。伐採の影響は単に個体数の減少をもたらすだけでなく、その繁殖を通じて将来世代の遺伝的多様性に大きな影響を及ぼすと考えられる。遺伝的多様性は、それぞれの生物種の存在および進化の源泉であり、これを十全に維持してゆくことが健全な森林生態系と生物多様性の維持のために重要である。そこで、本研究では、これまで十分に明らかにされていなかった、天然林樹種、特に、有用、高価で常に伐採の対象とされる樹種および景観管理上重要な樹種を取り上げ、その保有する遺伝的多様性の有様を明らかにするとともに、伐採等施業がそれに及ぼす影響を議論しようとした。広葉樹については、ウダイカンバ、オノオレカンバの2種のカバノキ属樹木を取り上げ、まず、分布域を網羅した遺伝的多様性の賦存状況を明らかにした。このことによって、近年、活発化の様相を見せている有用広葉樹種の人工林造成などの動きに対して、種苗配布区の設定など、遺伝的管理が必要であることを裏付けた。また、ウダイカンバについては、積極的な多様性保全策としての地はぎ施業の有効性を、遺伝的多様性の観点から検証した。また、針葉樹については、マツ科、モミ属のモミ、エゾマツおよびトウヒ属のアカエゾマツを取り上げ、それぞれ特定地域における遺伝的多様性の賦存状況を明らかにし、さらに、更新、造林、伐採などの各種施業が、それぞれの遺伝的多様性に及ぼす影響を評価した。これらの研究により、遺伝的多様性の実態がこれまで明らかになっていなかった樹種について、集団分化や遺伝構造が明らかになったばかりでなく、伐採や造林といった施業が将来世代の遺伝的多様性に及ぼす影響の一端を明らかにした。これらは、今後の森林管理計画に大きく寄与するものと考えている。
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