研究課題
基盤研究(B)
局所個体群内で人工交雑を行い堅果の充実率を解析した結果、自家受粉での堅果の充実率は極めて低く(0〜16.2%)であり、ブナが不完全な自家不和合性を示すことが明らかになった。また、他家受粉による堅果の充実率は高かったが、花粉親によって異なった(41〜95%)。AFLPマーカー及びSSRマーカーを用いて人工交雑に用いた両親及び人工交雑により作成したF_1家系の分析を行い、母樹(140遺伝子座、12連鎖群、地図距離1037cM)及び花粉親(206遺伝子座、13連鎖群、地図距離1096cM)の連鎖地図を作製した。近交弱勢に関連する遺伝子座を同定するため、母樹と同一の局所個体群に存在する個体を花粉親として得た実生を用いて、ゲノム全域から選んだ87個のマーカー遺伝子座における分離比の偏りを調べた結果、15座において有意な分離比の偏りが検出され、このうち2家系で分離比の偏りが共通する遺伝子座が5座、3家系で共通する遺伝子座が3座あった。また、母樹と花粉親とのゲノムの相同性と堅果の充実率との間には負の相関があった。これらの結果から、局所個体群内では近交弱性に関連する対立遺伝子を共有していることが明らかになった。マイクロサテライトDNA(SSR)マーカーを用いて成熟個体の空間的遺伝構造を解析するとともに、自然受粉堅果の花粉親を推定した。その結果、自家受精により生じた堅果はわずか5%であり、自然交雑下でも自家不和合性が機能していることを確認した。また、解析した局所個体群には弱いながら空間的遺伝構造が存在し、推定された花粉親の92%は局所個体群内に存在したが、母樹と花粉親との血縁度は花粉親としての貢献度にはほとんど影響を及ぼさなかった。母樹と花粉親との距離及び花粉親の個体サイズが花粉親としての貢献度に影響を及ぼしたことから、花粉供給量が局所個体群における繁殖の成否に重要な意味を持つと考えられる。
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