研究課題/領域番号 |
15380106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
二井 一禎 京都大学, 農学研究科, 教授 (50165445)
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研究分担者 |
中島 皇 京都大学, フィールド研究センター, 講師 (40202212)
山崎 理正 京都大学, 農学研究科, 助手 (80263135)
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キーワード | 森林流行病 / "ナラ枯れ" / Raffaelea quercivora / カシノナガキクイ / 共生酵母類 / エラグ酸 / カフェー酸 / 没色子酸 |
研究概要 |
これまで、"ナラ枯れ"を生物的に防除する方法を開発するため、病原体のナラ菌(Raffaelea quercivora)や、あるいはその伝播者、カシノナガキクイ(Platypus quercivorus)を対象にいくつかの拮抗生物の探査とそれら拮抗生物の候補を用いた防除の試みを行ってきたが、それらの試みの中で、ナラ菌と同所的な生活史を送る酵母類の中に同菌の発育を著しく抑制するものを見いだした。その抑制のメカニズムを調査したところ、この酵母が酢酸や酢酸エチルを生産すること、そして、これらの物質がナラ菌の生長を阻害する事実を明らかにした。今後、この酵母やその生成物を用いた防除手段の開発を試みると共に、自然界でこの酵母が果たしている役割の解明に勤めたい。一方、これら防除法を開発するうえで、ナラ菌感染による発病と枯死のメカニズムを明らかにすることは必須の条件と考えられる。このような視点から、ナラ菌を人工的に接種した苗木、成木内でのフェニルプロパノイド系物質の時空間的な変動を追い、エラグ酸やカフェー酸、没色子酸などに特徴的な増減を見いだした。特に樹木の側の抵抗性と関係があると考えられるエラグ酸について、広範な菌類に対する抗菌活性を明らかにすると共に、ナラ菌(Raffaelea quercivora)がこの物質の存在下でも生長を妨げられずに生長できることを見いだし、本菌の病原性発現のための前提条件になっていることを解明した。これらの事実は、来る平成18年の森林学会で公表の予定である。
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