下水汚泥などの有機性廃棄物の排出量は近年増加しており、全産業廃棄物中の大半を占める状況である。これらは肥料成分に富み、緑化工の分野において荒廃地緑化や植生回復のための生育基盤材として再利用が可能であると期待されているが、実際の利用に際しては解決すべき多くの課題があり、明確な法的規制が確立されるのを待つまでもなく、効率的で安全な有効利用の方策を確立することが必須の課題である。 本研究は、下水汚泥の緑地利用における最も基本的、かつ重要な問題である、活性汚泥処理過程での重金属元素の分離とコンポスト化による緑農地利用に関する手法確立を目的としたものであり、以下のことが明らかになった。 (1)下水処理過程における重金属除去を目的に実験用活性汚泥槽を作成して亜鉛の挙動を調べた。その結果、亜鉛は流入直後に汚泥に吸着されるのに対して、窒素などの肥料分はバッキ槽内で徐々に有機化され固定されることを明らかにした。そのため流入槽-バッキ槽を改良することで亜鉛含有率の低い汚泥を作ることが可能であることを示した。 (2)施用に伴う土壌-植物系への影響については有機物の乏しい花崗岩風化土で、資材の違いが強く現われ、コマツナを用いた実験では炭素率の低い資材で地下部の生長が阻害されCu濃度と乾重との間に負の相関が認められたことから、施用によるCu付加が関与することが示唆された。このような影響は炭素率の高い資材では回避される傾向にあり、コンポスト化にとなう副資材重要性が明らかになった。以上のことから、汚泥コンポストの緑農地利用に際しては施用土壌の有機物含有量に十分注意を払う必要があり、有機質に乏しい土壌では炭素率が高く、有機物に富む資材を調整する必要があることが明らかになった。
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