研究課題/領域番号 |
15380110
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助教授 (00231150)
|
研究分担者 |
溝上 展也 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (00274522)
吉田 茂二郎 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (80128462)
作田 耕太郎 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (10274523)
|
キーワード | 種多様性 / 人工林 / 機能タイプ / 施業法 / 林齢依存性 / GIS / 森林資源モニタリング / 絶滅危惧種 |
研究概要 |
1.小面積皆伐が行われ異齢パッチによって構成されるスギ人工林で、下層植生の構造を類型化し、それぞれの機能を評価した。その結果、植栽木(林冠木)の発達段階に対応した下層植生タイプが検出された。これらは階層構造や森林性高木種の豊富さと対応していた。検出された下層植生タイプはそれぞれ機能性が異なっており、大面積一斉皆伐による造林は森林の機能が時間的に変動すると予想されること、および、小面積皆伐による異齢林化により、林分税として多面的機能が安定的に発揮される可能性があることが示唆された。 2.履歴の異なる人工林表層土壌における土壌微生物の群集構造をPLFA法により分析した。その結果、F-H層の微生物群集は現在の林冠木から供給されるリターに強く影響を受けていたが、A層表層部では、現在の林冠構造ではなく過去の草地開発の影響が現れていた。この結果は、土壌環境ではなく、人工林化後にも林床に残存する草地型植生の根系の影響が、微生物群集の違いを生じさせたと推察された。 3.センサーカメラを用いて、スギ人工林景観における哺乳動物の森林空間の利用頻度を調査し、林分構造およびランドスケープ構造との関係を解析した。その結果、林冠層の樹種の違いで哺乳動物による利用頻度に大きな差は見られず、むしろ下層植生の繁茂度合いが影響していた。また、天然林および開地からの距離などのランドスケープ構造の影響は林分構造の影響よりも強く哺乳動物による森林利用を左右していることが明らかとなった。 4.人工林の下層植生の機能を評価する目的で、前生樹由来の更新個体が初期の森林再生に果たす役割を量的・質的に把握する目的で、人工林の伐採実験を行った。その結果、標とする再生林型に応じて、異なる起源の更新個体が森林再生に果たす役割が異なることが示唆された。すなわち、単に木本種が伐採地を被覆する状態を再生目標とする場合は、埋土種子由来の実生個体の果たす役割が極めて大きく、単純な種組成の照葉樹林再生を目標とする場合は、実生および前生樹由来の個体の両方が同等に再生を担うと考えられた。さらに、発達した照葉樹林に近い多様な樹種組成を早期に回復させることを目標とした場合は、実生個体の役割はあまり期待できず、前生樹由来の個体が大きな役割を果たすことが明らかとなった。
|