研究分担者 |
梨本 真 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 部長
松木 吏弓 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 主任研究員 (00371534)
阿部 聖哉 電力中央研究所, 我孫子研究所応用生物部, 主任研究員 (80311273)
関島 恒夫 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10300964)
|
研究概要 |
1.調査対象のイヌワシYつがいの全期間行動圏は84Km^2、繁殖期の採餌行動圏は約30Km^2となった。そのうち採餌行動に適した低木草地はGIS解析の結果1-3Km^2しかなく、このことがイヌワシYつがいの繁殖成績が10%台と低い原因と考えられた。列状間伐区でのイヌワシによる探餌行動がYつがいで、また、直接間伐列に突っ込んだ採餌行動がKつがいで確認されたが、頻度は全般に低かった。ビデオ撮影を含む餌内容調査では、ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類などが主食であり、これは20年前と同様であった。 2.イヌワシの採餌行動誘導に対する列状間伐の有効性を検証するため、北上高地南部の列状間伐前後におけるイヌワシの出現状況とイヌワシの主要な餌動物であるノウサギおよびヘビ類の個体数変化を追跡した。ノウサギは、列状間伐直後の2003年に著しく増加したが、その後減少し、間伐後3年目の2005年には間伐前の生息密度レベルにまで戻った。ヘビ類は、個体数が少ないため間伐の効果が検出できなかったが、間伐区では伐採列のみで観察されたことから、林内ギャップに対するヘビ類の誘因効果が期待された。その一方、イヌワシの出現および探餌頻度に関し、列状間伐による明瞭な誘引効果は認められなかった。この原因として、周辺により好適な採餌環境があること、及び間伐列の幅が狭く、また斜面の上下方向に伐採列があるので採餌行動に適さなかったことが考えられた。 3.北上高地南部の列状間伐地において,間伐後の3年間の植生モニタリングと,ノウサギ糞の植物DNAによる餌植物の推定,および食痕による餌選好性の調査を行った.その結果,ノウサギの餌資源の評価には選好する餌の種類と採食高さを考慮する必要があることが示唆された.また,調査地周辺で回収されたノウサギの糞からDNAを抽出し個体識別を行った結果,調査地周辺のノウサギ生息密度は7.3個体/km^2程度と推測された.
|