研究概要 |
本研究では、直パルス式熱分解法を用いてウッドバイオマスからカーボンナノチューブ複合体を効率的に製造するための最適条件を検討し、得られたウッドカーボンナノチューブ複合体の表面解析によって炭素の構造解析を行い、木材の高付加価値化につなげることを目的とする。 カーボンナノチューブの成長可能な表面化学構造を得るために、次に挙げるさまざまな焼結条件や触媒を用いた処理により木質炭素化物を作製した:(1)アルミナ粉末の添加による触媒炭素化、(2)アルミニウム・トリイソプロポキシド溶液によるゾルゲル処理後の触媒炭素化、(3)急速熱分解、(4)酸化ケイ素粉末による表面改質、(5)TEOS(テトラエトキシシラン)による表面改質、(6)銅・クロム・ヒ素などの重金属との触媒炭素化。これら処理のうち(2)のアルミニウムトリイソプロポキシド溶液によるゾルゲル処理後の触媒炭素化によってのみカーボンナノチューブを炭素化物表面に生成させることができた。本研究では、窒素ガス気流下で700℃,1時間でスギチップの炭素化を行ってから,アルミニウムトリイソプロポキシド溶液により処理をした。パルス通電加熱法によって1300℃、5分間焼結処理をして得られたサンプルと気相合成法によって表面に形成した多層カーボンナノチューブの構造を電子顕微鏡学的に調べた。 アルミニウムを用いた触媒黒鉛化ではAl_4C_3を形成後分解が生じ、比較的低温度でアルミニウム蒸気と高配向の黒鉛化炭素が形成された。得られた炭素化物の表面組織および微細構造を走査型電子顕微鏡と透過電子顕微鏡で追いながら検討を行ったところ、650℃,N_2/H_2,N_2/C_2H_4の条件で直径50nmの多層カーボンナノチューブが木質炭素化物の表面上にランダムに形成していることを世界で初めて明らかにした。リチウムイオン電池への応用が有望であり、研究を進めている。
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