研究課題
基盤研究(B)
目的と方法:これまでクラフトパルプをさらに解繊して得られるミクロフィブリル化植物繊維(MFC)について、生分解性樹脂(ポリ乳酸繊維)を30%複合しても、その複合物は熱可塑性が発現し加熱成型が容易となると共に270MPaという、高強度を有する成形材料が得られることを見出した。本研究は、この成果を踏まえ、MFCと生分解性樹脂との複合による高強度成型物(グリーンコンポジット)を射出成型で製造するための基礎技術の確立を目的とする。射出成型は、押し出し成型や縮成型に比べて、生産性が高く、複雑な形状の精密加工を可能にするが、一方で、成型材料には高い流動性が、また、成型には高度な技術が要求される。そこで、本年度は、生分解性樹脂との混練中にパルプをフィブリル化して複合化する方法に着目した。すなわち、高濃度パルプ用リファイナーを用いて、種々のフィブリル化の程度にパルプを処理後、現有するニーダー(ラボプストミル)を用いて、種々の混練条件で処理パルプと生分解性樹脂(ポリ乳酸)を混合した。なお、パルプと生分解性プラスチックは、射出成型性を考慮し、主として重量比1:1で混合した。得られた複合物について成型物を作成後、強度特性を評価すると共に、電子顕微鏡(SEM)および走査型プローブ顕微鏡で成型物内でのパルプ繊維のミクロフィブリル化の程度について観察した。結果:得られた成型物は、いずれの混練条件においても曲げ強度は100MPa前後の値を示し、十分な繊維補強の効果は得られなかった。しかし、パルプ表面を軽度にフィブリル化するだけで、続く混練過程において、ミクロフィブリル化が進むことが見出された。このことから、ミクロフィブリル化繊維を生分解性プラスチック内部にナノレベルでより均一に分散させる混練条件の検討が必要であることがわかった。次年度は、酵素処理(セルロース非晶領域を選択的に切断するセルラーゼ)等によりミクロフィブリル間の凝集力を低下させた後、混連する方法等について検討する。
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