研究課題
クラフトパルプをさらに解繊して得られるミクロフィブリル化植物織維(MFC)について、生分解性樹脂(ポリ乳酸繊維)を30%複合しても、その複合物は熱可塑性が発現し加熱成型が容易となると共に270MPaという、高強度を有する成形材料が得られる。本研究は、この成果を踏まえ、MFCと生分解性樹脂との複合による高強度成型物(グリーンコンポジット)を射出成型で製造するためゐ基礎技術の確立を目的とする。射出成型は、押し出し成型や圧縮成型に比べて、生産性が高く、複雑な形状の精密加工を可能にするが、一方で、成型材料には高い流動性が、また、成型には高度な技術が要求される。平成16年度の研究においては、生分解性樹脂との混練中にパルプをフィブリル化して複合化する方法に着目し、種々のフィブリル化の程度にパルプを処理後、ニーダー(ラボプラストミル)を用いて、種々の混練条件で処理パルプと生分解性樹脂(ポリ乳酸)を混合した。得られた成型物は、いずれの混練条件においても曲げ強度は50-80MPa前後の値を示し、十分な繊維補強の効果は得られなかった。しかし、パルプ表面を軽度にフィブリル化するだけで、続く混練過程において、ミクロフィブリル化が進むことが見出された。このことから、本年度は、ミクロフィブリル化繊維を生分解性プラスチック内部にナノレベルでより均一に分散させる混練条件について検討した。射出成型性を考慮し、繊維含有率は最大30%とし、ポリ乳酸およびポリサクシネートとの混練コンパウンド化について検討した。得られた複合物について成型物を作成後、強度特性を評価したところ、弾性率の向上は認められたが、可塑性は低下し、引張強度においては明確な差は認められなかった。しかし、電子顕微鏡(SEM)および走査型プローブ顕微鏡で成型物内でのパルプ繊維のミクロフィブリル化の程度について観察したところ、混練過程での明確なナノファイバー化が認められた。次年度は、機械特性だけでなく熱膨張特性についてもナノファイバー効果について検討するとともに、弾性率の向上に効果のある混練過程でのナノファイバー化、その程度について検討する。
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