研究課題
基盤研究(B)
研究代表者らは、クラフトパルプを解繊して得られるミクロフィブリル化植物繊維(MFC)を原料にした成型材料の製造を試みてきた。その過程で、ミクロフィブリル化パルプに生分解性樹脂(ポリ乳酸繊維)を30%複合したところ、熱可塑性が発現し加熱成型が容易となると共に270MPaという、高強度を有する成形材料が得られた。この成果を踏まえ、本研究では、MFCと生分解性樹脂との複合による高強度成型物(グリーンコンポジット)を射出成型で製造するための基礎技術を確立する。ミクロフィブリル化繊維を生分解性プラスチック内部にナノレベルでより均一に分散させる混練条件について検討した後、MFCをポリ乳酸樹脂中に均一分散させると、混練後のコンパウンドを用いた圧縮成形試料において、10%の繊維添加でポリ乳酸の引張強度を最大1.4倍にまで増大出来ることを見出した。続いて、MFCと生分解性樹脂との界面制御を目的とし、セルロースへの化学処理の効果について検討した。セルロースミクロフィブリルの表層部を選択的にアセチル化処理したMFCを重量ベースで5%添加するとポリ乳酸樹脂のヤング率および引張強度をそれぞれ約25%および約15%増大できた。いずれも無処理MFCの添加より高い値であり、アセチル化処理によりポリマーとの界面がより最適な状態に制御されたことが知られた。さらに導入するアシル基をより嵩高いものにしたところ、プロピオネート化でさらに成型体の強度、弾性率を増大できたが、より嵩高い官能基の導入では、ヤング率が低下した。最後に、MFC補強PLA複合体を用い射出成形を行い、PLA成形体に比べ熱変形の小さな成形体を射出成形で得ることに成功した。
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