研究概要 |
本研究は,スルメイカを対象として,気象の寒冷・温暖レジームシフト,アリューシャン低気圧の発達に影響される冬季季節風の強さ,海面気温などによって変化する本種の再生産・加入海域の表層暖水と季節混合層深度の季節・経年的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているのかを明らかにすることを自的としている.平成15年度の成果は以下の通りである. 平成15年10月中旬の北大練習船「おしょろ丸」による日本海調査時に,水中ロボットカメラ(ROV)による卵塊探査を行い,水深100m,水温21℃の密度躍層において鮮明なスルメイカ卵塊の映像を撮影した.しかし,今年度本申請研究費で購入したROV搭載の海洋生物吸引装置による卵塊物質の吸引ができず,次年度再挑戦することとなった. 1980年代以降の対馬海峡-東シナ海のアリューシャン低気圧と冬季季節風の各指数,海面水温とスルメイカの秋・冬生まれ群の漁獲量との関係を調べた.その結果,両生まれ群とも冬季季節風が強い年の翌年の漁獲量が減少する傾向が認められた.9-12月の間,スルメイカを長期飼育して成熟させ,完熟な雌を用いた人工授精を行い,大量のふ化幼生を得た.このふ化幼生を用いて15-23℃の各水温条件で幼生の遊泳速度を測定した.その結果,遊泳可能な水温範囲は20-23℃と高水温域のみであること,また,この水温での垂直方向100mの遊泳時間は,約7-8時間であることが明らかとなった. 今後,これらの知見を用いて,従来の再生産可能海域から,さらに限定されたふ化可能水域を抽出して,その季節・経年変化と資源変動との関係の解析の手法を見出すことができた.
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