研究課題
これまでウナギ卵において、卵成熟促進因子(MPF;cdc2とサイクリンBの複合体)の動態解析あるいは染色体像の組織学的観察といった、核成熟に着目した解析を進めてきた。本年度は、比較的多くの良質卵を用いて、同様の解析を行なった。その結果、サイクリンB抗体により検出されるバンドが薄いあるいは検出されない卵は受精率および孵化率が低かった。また、良質卵では第2減数分裂中期像が多く観察される傾向を示した。しかし、良質卵でも必ずしも第2減数分裂中期の割合が高いとは限らなかったり、悪質卵でもサイクリンB陽性バンドが濃かったり、第2減数分裂中期の割合が高いものもみられた。以上の結果から、ウナギ卵における卵質悪化の一因は、核成熟不全にあることが確認された。さらに、キンギョ卵においては、排卵後の時間経過に伴う卵質悪化とMPF等との関係を解析した。その結果、キンギョ卵では時間経過に伴い受精率および孵化率が低下したが、第2減数分裂中期の染色体像は卵質が低下した時間帯でも観察された。cdc2、サイクリンB濃度およびMPFのキナーゼ活性と受精率の間には相関はみられなかった。リン酸化MAPK濃度と受精率の間には若干の相関がみられたが、明確ではなかった。従って、正常な核成熟は、良質卵の必要条件ではあるが、十分条件ではないことが示唆され、今後は細胞質成熟あるいは過熟に関わる因子の検索などを進める必要があると思われた。
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水産育種 35・2(印刷中)
The fish oocyte : from basic studies to biotechnological applications (P.J.Babin, J.Cerd, and E.Lubzens, eds.) (印刷中)
Aquaculture 245
ページ: 39-47
ページ: 287-294