研究課題/領域番号 |
15380133
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
北田 修一 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (10262338)
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研究分担者 |
岸野 洋久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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キーワード | 種苗放流効果 / 遺伝的集団構造 / 種苗放流の遺伝的影響 / マダイ / ヒラメ / クルマエビ / ニシン / サワラ |
研究概要 |
今年度も引き続き、1.種苗放流が資源量に与える影響の評価および、2.種苗放流が天然資源に与える遺伝的影響の検証、に取り組んだ。 1では、代表的な栽培漁業対象種であるマダイ・ヒラメ・クルマエビ・アワビ類について、漁獲量と放流量の累年統計および放流効果に関する既往知見をレビューし、種苗放流の有効性と限界を評価した。また、事例研究として、ノコギリガザミについて、mtDNAを遺伝標識として混合率を推定することにより、放流効果を評価した。 2では、地域性ニシンを対象として、北海道の噴火湾から479個体、厚岸湖から405個体および放流魚102個体、湧洞沼から400個体を、また、青森県尾駮沼から16個体、岩手県宮古湾から30個体の産卵親魚を採集し、5種類のマイクロサテライトDNAマーカーを用いて解析した。また、mtDNAのD-loop領域について、RFLP解析および直接シークエンシングを行った。各標本群においてH-W平衡が成り立っていることから、これらは独立した地域群であることが示された。遺伝的多様性は各集団で高かったが、絶滅危惧種に指定されている尾駮沼および宮古湾ではアリル数が他と比較して有意に小さかった。宮古湾では宮城県万石浦から親を移植して生産した種苗を1984年以降放流しており、近年は年間50万尾の放流規模となっている。近交係数および個体間近縁度も標本群間では最も高い値を示しており、長年の種苗放流が天然集団に遺伝的影響を与えていることが強く示唆された。一方、厚岸湾では、放流魚と天然魚の遺伝子的差異は無視できる程度と判断され、近交係数および個体間近縁どの顕著な上昇は見られなかった。さらに、1と2の複合研究として、瀬戸内海のサワラの資源回復計画を事例に、種苗放流と漁獲制限の管理効果をシミュレーションにより比較した。現行の漁業管理の下では種苗放流は資源の回復に不可欠であり、遺伝的影響もほとんどない。しかし、さらに漁獲圧を15%減少することができれば種苗放流を行わなくても資源回復目標の達成が可能であることが予測された。
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