研究課題
基盤研究(B)
本研究では、種苗放流を用いて減少した水産資源の増加は可能か、また、同時に遺伝的多様性を維持あるいは修復できるかを実データから明らかにすることを目的とした。太平洋沿岸の地域型ニシンについて、北海道の噴火湾、厚岸湖、湧洞沼、青森県尾駮沼、岩手県宮古湾、宮城県松島湾から2,055個体の産卵親魚を採集し、5種類のマイクロサテライトDNAマーカーを用いて全個体の遺伝子型を決定するとともに、mtDNAのD-looP前半領域について各集団30個体の塩基配列を決定した。集団全体のFSTは0.017で遺伝的分化は小さいが、任意交配する各地域集団からなるメタ個体群を形成した。放流が行われている厚岸、宮古においても遺伝的多様性は高く、近交係数も他と比較して遜色なかった。種苗生産には毎年200尾程度の回帰親魚を用いており、放流魚と天然魚のアリル頻度に有意な差は検出されなかった。サワラについて、新たにマイクロサテライトマーカーを開発し、瀬戸内海の燧灘、備讃瀬戸、大阪湾の産卵場で漁獲した親魚300尾および人工種苗200尾の5遺伝子座における遺伝子型を決定した。遺伝的多様性は高く、FSTは0の近傍にあり、瀬戸内海のサワラは遺伝的に均一であることがわかった。一方、天然魚と人工種苗のアリル頻度が大きく異なった。これは人工授精を用いているため親の数が毎年10尾以下であることによる。瀬戸内海東部では2002年放流群の漁獲量への混合率は30.8%と推定され、放流魚による天然資源への遺伝的影響が危惧される。マダイ、ヒラメ、クルマエビ、アワビについて、放流効果をレビューした。種苗放流によって、総漁獲量を増加できるが、その増加には限度があり、環境収容力を超えた場合は放流個体による天然個体の置換えが起きることを明らかにした。現在の遺伝的多様性を失わないことが肝要であり、種苗放流の適用は慎重に行うべきである。
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