研究概要 |
前年度は、エゾアワビ消化液から2種類のセルラーゼ(エンドβ1,4-グルカナーゼ)HdEG66とHdEG54を単離し、それらの一次構造を決定した。さらに、HdEG66の構造遺伝子をアワビ染色体DNAからクローン化し、そのイントロン-エキソンの配置からエゾアワビのセルラーゼ遺伝子が節足動物のセルラーゼ遺伝子と共通の祖先遺伝子から分化したものであることを明らかにした。本年度は、棘皮動物セルラーゼの遺伝子に関する知見を得るために、前年度に申請者らが単離したキタムラサキウニのセルラーゼSnEG54の一次構造および遺伝子構造を解析し、以下の成果を得た。1.PCRにより増幅したSnEG54のcDNAの翻訳領域1,335bpの塩基配列から、444残基のアミノ酸配列が演繹された。そのN末端には17残基の分泌シグナル配列が存在し、それに続く触媒領域の配列は、シロアリ、ホヤ、アワビなどのGHF9セルラーゼの配列と57%、55%、51%の相同性を示すことを明らかにした。2.ウニ精巣DNAから約8kbpのSnEG54の構造遺伝子を増幅することに成功した。その塩基配列を解析し、イントロンの位置をシロアリおよびホヤのセルラーゼ遺伝子のものと比較した結果、これら3種のセルラーゼ遺伝子間でアミノ酸配列上の同じ位置に存在するイントロンが少なくとも3つ存在することが明らかになった。これらの事実より、ウニ・セルラーゼも含めた動物のセルラーゼ遺伝子が、共通の祖先遺伝子から分化したものであることが強く示唆された。これらの成果に加え、キタムラサキウニから、セロオリゴ糖をさらにグルコースにまで分解するβ-グルコシダーゼの単離にも成功した。本酵素はエンドβ-グルカナーゼと共に、セルロースの糖化と代謝利用の鍵酵素と考えられ、今後、クローニングと構造解析を進める予定である。
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