研究概要 |
当該研究では水産系リン脂質の主成分であるDHA結合型リン脂質(DHA-PL)及び大豆リン脂質(比較対照)をリポソーム化し,制ガン効果の評価をin vitro及びin vivoで行った.その結果,大豆リン脂質リポソームが繊維芽肉腫の腫瘍生長を抑制できなからたのに対し,DHA-PLリポソームは対コントロール比約50%相当にまで腫瘍サイズを抑制することを認めた.作用機序の一端を見たところ,貪食を開始したマクロファージの細胞数,及び細胞一個当たりの人工ビーズ貪食数の何れにおいても,DHA-PLリポソーム添加群の方が大豆リン脂質リポソーム添加群よりも優れていることが判明した.細胞毒性は何れのリポソームもマクロファージ様細胞に対しては無く,Meth-Aガン細胞に対してのみ細胞毒性を示した.そのときの細胞毒性はDHA-PLリポソームの方が大豆リン脂質リポソームよりも強いことが示された. DHA-PLリポソームは経口投与においても腫瘍(Colon 20)の増大抑制効果を示し,屠殺時(13日日)の腫瘍サイズは,イカミールリン脂質リポソーム投与群,AHCC(製品化された菌糸体由来免疫附活物質)投与群,AHCC包摂イカミールリン脂質リポソーム投与群,コントロール群の4群中,イカミールリン脂質リポソーム投与群が最も腫瘍が小さく,AHCC投与群がこれに次いでいた.小腸上皮細胞の細胞間経路開口能は供試リポソーム中イカミールリン脂質群が最も優れ,合成DHA-PL群がこれに次いでいた。大豆リン脂質群はこの両者よりも劣っていた.インターロイキン12はイカミールリン脂質リポソーム投与群及びAHCC包摂イカミールリン脂質リポソーム投与群で高く,腫瘍壊死因子αはAHCC群で低かった.以上より,断言にはなお追試を要するものの,DHA-PLは何れの投与形態によっても,ある程度のガンの抑御作用が期待できることがわかった.
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