研究概要 |
ヒトデ類には捕食者による攻撃や物理的障害で傷ついた腕を自ら切り離す(自切する)種類がいる.熱などを掛けて人為的に自切させたヒトデの体腔液中に、自切を誘導する物質(自切誘導因子,APF)が分泌される。「本研究では、東京湾のマヒトデのAPFの単離を行った。 生物検定は、マヒトデをプラスチック製のバットの中央に置き、海水を入れない状態で1本の腕に検定液を注入する方法で行った。幅長が約5cmのものを用い、放射神経に触れない様に注意して試料を注射した。 熱水に漬けて自切させたマヒトデの体腔液を遠心分離、凍結乾燥してAPFを含む固体を得た。これを、トヨパールHW-40で、7つのフラクションに分離した。このうちのFr.6に自切誘起活性が見られたので、それをHPLCで5つのフラクションに細分した。自切誘起活性はそのうちの1つのフラクション(Fr.6-2)のみに見られた。今年度はこのフラクションをさらに分取し、単離の状況を分析用HPLCで検証した。その結果、このFr.6-2はさらに2つのピークに別れることが分かった。そこで、セミ分取用のHPLCカラムを使用してFr.6-2をFr.6-2-1とFr.6-2-2の2つのフラクションに分離した。 2003年には赤潮と青潮、2004年は赤潮と度重なる台風および猛暑の影響で、2年続けて東京湾のマヒトデがダメージを受けたために、生物検定がうまく機能しなかった。特に今年度は春から秋に掛けて異常が続いたので、生物検定が出来なかった。気候が比較的安定する秋から春は、生殖巣の発達により、生物検定に使用できない。 そこで、各フラクションの活性を調べる前に、NMRの測定を行った。単離できたのが超微量であったので、マイクロプローブでの測定を外部機関に依頼した。DMSO-d_6とD_2Oによる測定で^1H-NMRシグナルは検出できたが、^<13>C-NMRシグナルは観測できなかった。
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