本研究では、海藻レクチンのうち高マンノース型糖鎖特異的藻類レクチンファミリーおよび多機能ポリペプチド性藻類レクチンファミリーに属するものを対象として、それらの生物活性、活性発現機構および構造活性相関を解明することを目的とした。 高マンノース型糖鎖特異的藻類レクチンファミリーに関しては、紅藻トゲキリンサイEucheumaa serraレクチン(ESA-2)の糖鎖認識能の詳細と分子構造を明らかにするとともに、本レクチンの経口投与(飲料)によるマウス初期大腸癌の発現抑制の機構に検討を加え、同抑制はレクチン投与による大腸組織での活性酸素産生量の激減に由来することを明らかにするともに、新しく確立した手法を用いてヒト大腸癌由来培養細胞(HT-29)の本レクチンレセプターを同定した。次に、淡水産藍藻Oscillatoria agardhiiレクチンの分子構造と糖鎖認識能を解明するとともに、本レクチンが強力な抗HIV活性を有していることを明らかにした。さらに、このファミリーの厳密な高マンノース型糖鎖認識能に基づいて、本ファミリーのレクチンはプリオン病等の高感度検出試薬として注目されているニワトリ型モノクローナル抗体の簡易精製用アフィニティーリガンドとしてきわめて有用であることを明らかにした。多機能ポリペプチド性藻類レクチンファミリーに関しては、紅藻カギイバラノリHypnea japonicaレクチンがコアα1-6FucをもつN-グリカンにきわめて高選択的な結合特異性を有することを見出し、本レクチンが高感度癌検出試薬ならびに抗体依存性細胞障害(ADCC)活性を有する高純度抗体医薬の調製に有用であることを示した。
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