研究概要 |
本研究では,環境負荷を最低限に抑え,生物の持つ潜在的能力を最大限に発揮する持続的農業技術と技術を担う社会システムの構築に資する理論的・実践的基礎の提供を試みた。具体的には,(1)有機物循環に関わる研究,(2)その他資材の利活用に関わる研究,(3)海外における実態分析,および(4)総論に区分し,それぞれの課題について,技術・社会の双方の側面から学際的接近を図った。 1.有機物循環に関わる技術的側面,社会的側面からの分析(5名) 一般家庭由来の生ごみ堆肥化に有効な「衣装ケースを利用した堆肥化」手法を取り上げ,細菌種の特定や細菌叢の変化などの堆肥化プロセスの分析を行い,菌種の適切な添加による高品質堆肥の製造可能性を示す(苅田)とともに,行政が生ごみリサイクルのシステム構築を主体的に行うことの有効性を指摘した(波夛野)。その他,畜産事業体における有機物の地域循環への組織デザインの重要性(石田),有機物の発酵過程で発生するメタン発酵液の肥料としての有効性と経済性(長谷川浩),堆肥に含まれうる重金属の回収方法としてファイトレメディエーション技術の適用可能性(小畑)を考察した。 2.その他技術の開発・普及に関する研究(3名) 住宅の外壁材に使用されるパルプ入りケイ酸カルシウム資材の肥料効果と耐病性(江原),水産業における有機物循環の取り組みであるカキ殻の再資源化のコスト問題(長谷川健二),持続的技術の1つとして注目されるBMW技術の広範な経営への適用可能性(大原)を明らかにした。 3.海外における実態分析(2名) ベトナムにおける持続的農業技術の普及手法の解析(大原),パキスタンにおけるバイオマス技術の普及手法の解析(内山・大原),欧州における農業環境政策が農業経営の技術選択に与える影響(内山),について分析を行った。 4.総論(1名) 都市と農村を通じた有機物循環システム構築に向けた課題の整理を行った(内藤)。
|